成人ビーグル犬の外腸骨動脈に血管内からのアプローチのみ(外科的侵襲を伴わない方法)で動脈瘤を作成するための至適条件を検討した。次に、コントロール群と至適条件と想定されるもののうち、ひとつないし複数を適用した群に分けて(生理食塩水暴露群(コントロール群)、エラスターゼ暴露群、バルーン拡張後生理食塩水暴露群、バルーン拡張後エラスターゼ暴露群)動脈瘤作成実験を行った。その結果、複数の至適条件を組み合わせて適用した群(バルーン拡張後エラスターゼ暴露群)で統計学的有意差をもって動脈径が拡張した(動脈瘤が形成された)ことを確認した。さらに、病理組織学的にも検討を行い、組織学的にも動脈瘤の形成(内弾性板の破壊、消失中膜弾性線維の消失および外弾性板の変性)を確認した。 以上の結果より、成人ビーグル犬の外腸骨動脈に血管内からのアプローチのみ(外科的侵襲を伴わない方法)で、破裂しない安定した動脈瘤モデルの作成に成功した。 本研究により、ビーグル成犬といった中型動物に生理的状態に近似した動脈瘤を容易かつ短期間で作成する方法を開発しえた。本研究を発展させることで、頭頚部・胸部・腹部・骨盤・四肢などを含めた全身の動脈に実験的に動脈瘤を作成することも可能である。 これにより、今後の動脈瘤に対する低侵襲性の新しい治療法の開発・研究を促進し、その確立につながるものと期待される。さらには、動脈瘤の血行動態や増悪因子の解析など動脈瘤全般に対する基礎的研究への応用も可能と考える。
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