研究概要 |
銅-64の製造はニッケル-64(存在比 全ニッケルの0.9%)を酸溶解し、金にメッキする。そのメッキ面に対し、サイクロトロンにより水素を衝突させ、^<64>Ni(p,n)^<64>Cu反応により銅-64を製造する。製造法および収量ともに安定しており、オクトレオタイドや抗体の標識を行い、動物による評価を行っている。HPLCによる分析も行えるようになり、品質も満足できるものとなった。 新規銅-64用キレート剤については、ポリアミン系錯体であるSarcophagine(3,6,10,13,16,19-hexaazabicyclo[6.6.6]-eicosane-1,8-diamine)を基本骨格とするものの合成検討を行う。ポリアミン系は重合しやすく、反応溶媒、触媒などの最適化することにより、反応を制御することが可能となった。この基本構造を母体として、アミン反応性、アルデヒド反応性またはチオール反応性の官能基を導入し、最適なキレート剤を構築する。 銅-64は放射活性を有するために、極微量で標識できる。よって、銅が生体内に及ぼす効果は極めて少ない。ところが、少量の吸着が起こると収量などに大きく影響し、通常の硼ケイ酸ガラスでは金属吸着性が高く、吸着している金属が溶出する可能性もある。日本薬局方に準拠した非ガラス性バイアルを使用することにより、金属の吸着や溶出を抑えることができるようになった。 ニッケル-64が銅-64に反応するのはほんの一部であり、ほとんどはニッケル-64のままで存在する。今後はこのニッケルを効率よく回収することを検討する予定にしている。銅-64の精製や分析についてもまだ完全ではないので、更なる検討を進めていく。
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