研究概要 |
新規銅-64用キレート剤については、ポリアミン系錯体であるSarcophagine(3,6,10,13,16,19-hexaazabicyclo[6.6.6]-eicosane-1,8-diamine)を基本骨格とするものの合成検討を行う。ポリアミン系は重合しやすく、反応溶媒、触媒などの最適化することにより、反応を制御することが可能となったが、これらの化合物は籠状の構造を有しており、反応が進むことにより構造が保てなくなることがわかった。現在は籠内にコバルトを配位することにより、様々な反応に耐えられることがわかった。だが、コバルトは強固に配位しているため、合成後取り除くことに苦労させられた。今後はもっとハンドリングのしやすい同じ遷移金属であるニッケルとか銅などで検討する予定にしている。 また、同時並行として医薬品として用いられている抗VEGF(血管内皮細胞増殖因子)抗体であるアバスチン(bevacizumab)を銅-64を標識をすることに成功し、腫瘍移植のマウスでPET画像を取得できた。アバスチンは腫瘍増殖の際に行う血管新生作用を阻害するものであり、いわば腫瘍細胞を兵糧攻めにする作用を有しているものであり、臨床的に意義が高い。アバスチンの有効性を上げるためには効果判定が必要であり、PETを用いて診断が可能であれば、一度に全身の情報が得られ、非常に有益である。 しかしながら、まだ、肝臓などの正常組織の生理的集積が見られており、来年度においても更なる改良を行っていく予定にしている。
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