研究概要 |
抗体による診断法は特異性が高く、また抗体による治療(抗体医薬)も副作用が少ないため、注目されている。しかしながら抗体を含む高分子化合物は標的部位に対しての到達時間が遅いため、感度の高いPET(陽電子断層撮像法)に使用している半減期が短い放射性核種(汎用されているフッ素-18で半減期110分)では難しいとされていた。銅-64は半減期が12.7時間であり適当ではあるが、銅-64で抗体を標識するためにはキレート剤を抗体に結合させることが必要となる。銅-64用キレート剤にとしては1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid(DOTA)や1,4,8,11-tetraazacyclotetradecaneN,N,N",N"-tetraacetic acid(TETA)が汎用されているが、肝臓内銅酵素の影響を受けるために肝臓内に銅-64が蓄積してしまう。そのような銅酵素の影響を受けにくいポリアミン系錯体であるSarcophagine(3,6,10,13,16,19-hexaazabicyclo[6.6.6]-eicosane-1,8-diamine)錯体を選択した。中間体合成については既報に従い合成を進めていたが、反応効率等に問題があり、再現性が見られないため、安定的な生産が難しい状態となった。 中間体であるCu-nitrobenzyl diaminosarcophagineの合成は、4initrobenzy体が副生成物として多く生成することがわかり、エチレンジアミンによる被毒を行うことによってベンジル基の脱離を一定量抑制することに成功した。当初の予定では直接法による抗体標識を目指していたが、誘導体化を確立するまでには至らなかった。しかしながら架橋剤を用いて間接的に標識することは確認できた。
|