研究概要 |
本研究は、拡大肝切除前に非塞栓側(非切除側)肝容積増加の目的で行われる門脈塞栓術において、門脈塞栓前に血小板製剤を門脈内に直接或いは末梢血中に投与することで、早期に非塞栓側における肝細胞の増殖および肝容積の増大がより促されるかを検討するものである。実験はテルモ株式会社の実験施設であるテルモメディカルプラネックスにおいて行われた。本実験での対象は4匹の♀豚、体重は平均41.6±1.82kgで血小板投与群と非投与群に分けた。 方法: ・ 門脈塞栓:全身麻酔下で経皮経肝的に門脈左枝を穿刺→門脈造影→門脈左枝塞栓。塞栓物質はlipiodol10ccとスポンゼル3枚分の細片を混合し、門脈左枝の血流が完全に消失するまで注入した。 ・ 血小板作成:対象全てにおいて門脈穿刺前に動脈ルートから2単位ずつの採血、遠心分離を行い、濃縮血小板製剤を合計8単位作成 ・ 血小板投与と血小板数測定:血小板投与群には門脈左枝塞栓直後、右枝内に非自己血小板2単位を20分かけて注入。抜管後に自己血小板1単位を末梢から投与。翌日朝に自己血小板1単位点滴(合計4単位投与)。非投与群には同じ量の輸液を門脈内、末梢から投与した。塞栓前後、翌日政び2週間後に血小板数の測定を行った。 ・ 肝容積測定:塞栓前後に動脈ルートからCTAPを施行し、Exper CT (conebeam CT)を用いて肝全体を撮影した。測定用ソフトウェアとしてWinRoofを使用し、冠状断像にて(1症例40枚)右葉&内側区と左葉に分けて容積測定を行った。 結果:肝容積は血小板投与群(C, D)の増加率はそれぞれ19.7%, 33.6%、でコントロール群(A, B)の増加率(17.6%, 32%)と比較して若干高かったが、有意差は見られなかった。どちらも2例目に行った方が大きくなっていた。2週間後の造影で塞栓門脈枝に部分的に再開通が見られた。血小板数は塞栓後から減少し2週間後に更に減少していた。投与群では塞栓後と翌日には減少しなかったが、2週間後には非投与群と同様に減少していた。 結論:門脈塞栓時に血小板投与を行ったが、肝容積増加に明らかな促進効果は得られなかった。塞栓物質が均一でなかった可能性が考えられた。
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