重症静脈血栓塞栓症に対するIVR(Interventional Radiology)への期待はきわめて大きいが、いまだ標準治療として評価されるには至っていない。申請者は、本領域における新しいIVR治療システムを考案し、これまで研究を重ねてきたが、それに伴い新たな問題点も明らかになってきている。本研究の目的は、重症静脈血栓塞栓症に対する血栓溶解・破砕・吸引療法のハイブリッドIVR治療システムの新たな展開を求めることにある。具体的には、基礎的研究を行うことにより安全性を高め、最終的に治療成績を更に向上させる。本年度は、まず、安全性に特に留意した特注血管シースと、それに適合する大口径の特注血栓破砕カテーテル・特注血栓吸引カテーテルを設計、作成した。そして、血管ファントームを用い、実際に作成した血栓に対し、破砕・吸引実験を行うことにより、重症静脈血栓塞栓症に対するハイブリッドIVR治療に最も適したシース/カテーテルシステムを決定することができた。本年は順調に研究が進展したため、動物実験により、システムの安全性と有効性を確認することができた。そこで、本学付属病院に搬入される重症静脈血栓塞栓症を対象として、十分なインフォームド・コンセントを得た後、細心の注意をもって、新しいハイブリッドIVR治療システムの臨床応用を開始することとした。なお、臨床例においては、手技に伴う血栓塞栓の遠隔塞栓に対する解決法と予知についても研究を進めることができた。
|