研究概要 |
放射線治療は、悪性腫瘍の根治的治療ではあるが、単独では十分な局所制御は得られていない。近年、静注によるアスコルビン酸の高濃度治療が可能になり、血中で10mM程度までアスコルビン酸濃度を維持させることが可能になった。我々は、アスコルビン酸を併用することにより、照射と異なるアポトーシス系路が追加され、抗癌作用が増加すると考えており、以下の研究を行った。 1.アスコルビン酸放射線照射における相乗効果の確認 ヒト白血病細胞(HL60)を用い、放射線照射単独(0-8Gy)、アスコルビン酸単独(0.01mM-50mM)、アスコルビン酸併用放射線照射の3群の、細胞数およびDNA断片化などから、アポトーシスを定量的に測定し、アスコルビン酸に相乗効果があるか具体的に検討した。その結果、アスコルビン酸単独では濃度5mMで、アポトーシスの頻度が高かった。このためアスコルビン酸5mMを併用し2Gy照射したところ、2Gy照射単独より、アポトーシスが増加した。以上より、アスコルビン酸は放射線と相乗して抗癌作用のあることが示唆された。 2.相乗効果機構におけるカスペース活性とアポトーシス関連蛋白の解明 我々は、Colorimetric assay kit (Bio Vision)を使用し、上記細胞のカスペース(3,8,9)活性の測定を行ない、各細胞のアポトーシス移行の傾向を調べた。その結果、カスパーゼ3活性、カスパーゼ8活性、カスパーゼ9活性のすべてにおいて、アスコルビン酸併用X線照射が最も高い値を示した。また、すべての処理で、カスパーゼ3およびカスパーゼ9活性は経時的に上昇したが、カスパーゼ8活性は、アスコルビン酸単独とアスコルビン酸併用X線照射で上昇がみられたが、X線照射単独では顕著な上昇はみられなかった。
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