放射線治療は、悪性腫瘍の根治的治療ではあるが、単独では十分な局所制御は得られていない。特に問題になるのは、分割照射により発生する放射線抵抗性細胞であり、この存在が放射線の治療効果を減弱させる一因と考えられている。我々は、アスコルビン酸を併用することにより、照射と異なるアポトーシス系路が追加され、抗癌作用が増加することを昨年示した。そこで、放射線抵抗性腫瘍を樹立し、その分子生物学的性質を明らかにするとともに、アスコルビン酸併用により、この放射線抵抗性株でも抗腫瘍効果が増強するか検討した。 1.放射線抵抗性株の樹立と分子生物学的分析 ヒト白血病細胞(HL60)に4Gyを1週間おきに4回照射(計16Gy)した。その後、生存した細胞を継代し放射線抵抗性株とした。この放射線抵抗性株に4Gy照射し、対照と生存率をコロニーアッセイで比較したところ、抵抗性株では有意に高かった。抵抗性株の細胞周期を調べたところ、放射線照射後はG2/M期の割合が上昇していた。また、抵抗性株では照射後もcaspase 3の活性化が低い傾向が見られ、DNA断片化も減少していた。このように抵抗性株では、放射線に対してアポトーシス抵抗性になっていた。 2.放射線抵抗性株のアスコルビン酸併用放射線の効果について。 この放射線抵抗性株を用い、放射線照射単独、アスコルビン酸単独、アスコルビン酸併用放射線照射の3群の、細胞数およびDNA断片化などから、アポトーシスを定量的に測定し、アスコルビン酸に相加効果があるか具体的に検討した。アスコルビン酸5mMを併用し2Gy照射したところ、2Gy照射単独より、アポトーシスが増加し、細胞生存率は減少した。以上より、アスコルビン酸併用放射線療法は放射線抵抗性株にも有効である可能性が示唆された。
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