研究概要 |
本研究で用いているギメラシル(5-chloro2,4-dihydroxypyridine;CDHP)は経口フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍薬として既に臨床応用されているTS-1(S-1)の含有成分のひとつであり、5-FUが肝臓内で分解されるのを阻害する作用を持つ。我々の研究でこの薬剤はがん細胞内部で放射線感受性を上昇させている働きがあることがわかった。この性質を用い、放射線感受性のメカニズムを明らかにする目的で本研究を行っている。21年度ではCDHPは腫瘍内低酸素領域部分での放射線増感作用は示さない事がわかった。22年度においては、CDHPが癌増殖に関わる因子に影響を及ぼしているのか否かを調べた。10cmシャーレに、増感効果Q大きいDLD-1/5-FU耐性細胞株を撒き、無治療群、CDHP単独群、放射線単独群、CDHPと放射線の併用群としてtreatmentした後24時間後に細胞を回収、その後Western解析を行った。その結果CDHPが放射線と併用した場合のみNF-kBの発現が減少する事、p-53の発現がわずかだが増加する事がわかった。この結果により作用メカニズムについては、CDHPが細胞の放射線感受性を上げている事、NF-κB、アポトーシス経路にも作用を及ぼしているらしい事が伺えた。一方、他施設においてもギメラシルが多様な癌細胞における放射線増感作用を示す事が学会等で発表されており、もはやその効果は疑いのない事実となってきている。そのため22年度後半からはCDHPの放射線増感剤としての有効性を探るための臨床試験を行うべく計画を立て始めることとなった。この臨床試験は23年度に引き継ぎ、実現させるべく、現在準備をしている段階である。
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