これまでに開発した同期型レンジ走査式のディスタル形状位置検出器に対して、その測定深制御部(2枚の並進型クサビ形レンジシフタ)を陽子線加速器からのビーム出射ゲート信号に同期させて自動制御することにより、陽子線治療における照射線量分布計測の高速・高精度化を可能にする。これにより、これまで時間的制限により実施されていなかった患者毎の照射線量分布計測と治療計画による線量分布との比較が可能となる。今年度は自動制御のためのソフトウェア開発を、パーソナル・コンピュータ、モーター・ドライブ用コントローラ、ドライブ用電源、制御信号用端子台、およびLab Viewを用いて行った。ビーム出射ゲートとビーム信号をNIM回路モジュールにより擬似的に作成して、開発された自動制御ソフトウェアの試験を行うためのテストスタンドを構築した。これにより、実際の加速器を使用した本実験前に、ソフトウェアの試験の実施が可能となった。2秒間隔で0.4秒開くビーム出射ゲート内に出現したビーム信号を読み出し、その強度が十分であると判断した場合にレンジシフタの次点へ移動するというプログラムどおりの動作を確認した。この結果、測定深制御部の自動制御が実際のビーム周期において十分に高速で制御可能なことが確認できた。これはこの研究の目的であるリアルタイムで計測される線量分布を治療計画の比較検証するために必要な条件の一つが解決されたことになり、この研究のために大変重要な結果である。
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