陽子線治療の治療計画で現在広く使用されているペンシルビーム法による線量分布計算においては患者毎に異なる照射野形成のために用いるボーラス/コリメータで散乱される効果が反映されていないため、治療照射時に照射線量を計測する線量モニターに対して患者毎に決定すべき線量校正係数を実測と事前に収集されたデータに基づいて求められた予測値との比較によって、線量校正係数の適正を判断している。本研究における同期型レンジ走査式ディスタル形状位置検出器システムは検出範囲を変えることにより、ディスタル形状位置の検出のみならず線量校正点付近の線量分布計測にも利用できる。本年度は測定深制御部の自動化を完成し、実際に使用したボーラス/コリメータを同照射条件下でビーム試験を実施した。2秒のビーム間隔で0.3秒間出射されるスピル毎に、線量分布検出器である1mm厚x200x200mm^2のシンチレーター板の深部位置を測定深制御部で1mmずつ可変させながら、CCDによる形状位置検出器により線量校正点に対して±25mmの範囲の線量分布を100秒で収集し、このシステムの高速性を検証した。線量分布解析プログラムを開発し、深部線量分布と横線量分布を、基準検出器の並行平板型(NACP)線量計と2次元分布検出器イメージング・プレート(IP)による結果と比較検討した。解析プログラムではシンチレーター光に対する系統的なノイズと中性子等による統計的スパイクノイズ等を除去するフィルター類の開発、線量分布解析プログラムの開発を行った。その結果、シンチレーターに内蔵したクエンチング効果の補正後の分布は、基準検出器による分布に対して形状に数%程度の相違が部分的に確認され、精度管理の面で更なる詳細比較とその相違の原因究明に対する課題が残された。線量分布とシンチレーター光分布との関係をシミュレーションすることが原因究明の方法の一つと考える。
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