研究課題/領域番号 |
21591607
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
宇野 隆 千葉大学, 大学院・医学研究院, 准教授 (30302540)
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研究分担者 |
井上 幸平 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (40312053)
磯部 公一 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (80334184)
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キーワード | 重粒子線 / 脳照射 / 放射線障害 / 母性行動 / マウス |
研究概要 |
本研究では、供試動物自体が習性的に保持する「母性行動」を指標として脳に対する放射線障害を推定することを目的とした。線量分布の優れた重粒子線(HIMAC)を使用することにより、雌マウス脳への照射を大脳皮質部および海馬から視床下部を含めた5ミリ立方の部位に重粒子線(炭素線)を確実に実施して母性行動として巣重量として数値化が可能な「営巣行動」と新生仔を巣に持ち帰る行動をスコア化して判定し得る「リトリービング行動」を観察して中枢神経に対する重粒子線の影響について検討した。実験には母性行動が明確に発現する4CS雌マウスを用いた。また、線量分布に優れた重粒子線を使用することにより、脳組織以外の軟部組織(咽頭、喉頭部)などが照射野に入ることなく食餌の摂取障害も認められず、ヒトの脳腫瘍照射モデルとした。 結果は、照射後1カ月のマウス頭頂部には長径mm前後の脱毛が認められたが、マウスの性周期(本研究に使用した4CSマウスは4日発情周期)に変化はみられず、計画されたように下垂体には照射されていないと推測された。照射後3カ月までの結果では、炭素線15Gy照射マウスで母性行動に変化がみられなかった。30Gy照射マウスでは「営巣行動」はみられるが「リトリービング行動」では達成不可なマウスが8匹中1匹に認められた。最終本年度(23年度)における照射後6~8カ月後では大脳に対する15Gyでは母性行動に影響は認められず、30Gy照射では8匹中3匹のマウスに障害が認められ、さらに45Gyや60Gyの炭素照射では、全く母性行動度を示さないマウスや新生仔食殺行動を示す個体も確認された。 マウス脳に対する5ミリ立方の照射野は大脳の約2/3を占めており、この広範囲な脳容積に対する15Gy照射では、照射後8カ月を経過しても習性的な母性行動に障害が認められなかった。これらの結果は、若年者脳腫瘍の放射線治療(線量)に対する指標の一つとなり得る可能性があり、本研究は有用であった。
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