本年度ではin vitroでリン酸化H2AXの蛍光免疫組織染色により検出されたDNA二重鎖切断数とコロニー形成試験で求めた細胞生存率との関係をヒト悪性腫瘍株を用いて求めた。昨年度の結果から、細胞はplateau phaseのものを用い、照射24時間後に蛍光免疫組織染色およびコロニー形成試験を行った。使用した細胞は線維肉腫細胞HT1080細胞、食道扁平上皮癌細胞TE-9細胞、食道扁平上皮癌細胞KYSE150細胞である。各細胞のDNA Ploidyは、正常ヒトリンパ球を1とするとそれぞれ1.1、1.58、1.58である。 使用したいずれの細胞株でも24時間後のリン酸化H2AXフォーカス数は線量依存性に増加した。リン酸化H2AXフォーカス数と細胞生存率との関係をみると、いずれも強い相関関係を認めた。しかしながら、直線の傾きが細胞毎に異なっているため、細胞が異なるとリン酸化H2AXフォーカス数からは細胞生存率は予測できないことが明らかになった。 DNA量が多くなればリン酸化H2AXフォーカス数も増加すると考えられるので、それぞれの細胞のDNA Ploidyでフォーカス数を補正すると、各細胞での傾きの差が縮小し、全細胞株でフォーカス数と細胞生存率に極めて強い相関(R2=0.78)が認められた。 この結果から、リン酸化H2AXフォーカス数をその細胞のDNA Ploidyで補正することで細胞生存率が予測できる可能性が示唆された。次年度はさらに細胞株の数を増やして上記可能性を確認し、本法による細胞生存率予測法の確立をめざす。
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