本年度もin vitroでリン酸化H2AXの蛍光免疫組織染色により検出されたDNA二重鎖切断数とコロニー形成試験で求めた細胞生存率との関係をヒト悪性腫瘍株について求めた。昨年度と同様に細胞はplateau phaseのものを用い、照射24時間後に蛍光免疫組織染色およびコロニー形成試験を行った。使用した細胞は昨年度使用した線維肉腫細胞HT1080細胞、食道扁平上皮癌細胞TE-9細胞、食道扁平上皮癌細胞KYSE150細胞以外に、4種類の細胞(食道癌細胞KYSE30およびKYSE220、乳癌細胞HCC70およびZR75-1)を追加した。また、各細胞のDNAプロイディを測定した。 使用したいずれの細胞株でも、リン酸化H2AXフォーカス数と細胞生存率に強い相関関係を認めた。しかしながら、全7種類の細胞を対象にして評価した場合、弱い相関関係しか認められず、リン酸化H2AXフォーカス数からは細胞生存率は予測できないことが明らかになった。DNAプロイディでフォーカス数を補正すると、5細胞株ではフォーカス数と細胞生存率に極めて強い相関を認めたが、2種類の細胞では大きく異なっていた。HT1080細胞はリン酸化H2AXフォーカス数に比較して細胞生存率が低く、アポトーシスの寄与が示唆された。一方、KYSE30細胞では逆にリン酸化H2AXフォーカス数に比して細胞生存率が高く、アポトーシス以外の要因の存在が考えられた。 この結果から、細胞生存率が予測するためにはリン酸化H2AXフォーカス数をその細胞のDNAプロイディで補正のみでは不十分で、他の要因を加味する必要性が示唆された。
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