研究概要 |
I,II期乳癌に対してKORTUC IIを用いた非手術での乳房温存治療を行い、乳癌治療から手術をなくし、さらなる低侵襲化を図ることを目的とした。対象は本治療を希望した乳癌(浸潤性乳管癌)患者40例(I期14例、IIA期16例、IIB期10例)であり、平均年齢は58.6歳であった。導入化学療法(EC and/or Tx)は、ザンクトガレンコンセンサス2005に沿ってII期の23例に施行し、内分泌療法はER陽性の29例に施行している。放射線治療は、従来から当科で行っている方法に基づき、Pinnacle^3を用いて治療計画を行いForward planning IMRTにより、リニアック4MVX線を用いた。Field-in-field法により、主に接線非対向4門照射にて、1日2.75Gyx週5回の寡分割照射を行った。なお、X線照射の最後の3回に、1回3Gyの電子線ブースト照射を併用した。増感剤(0.5%H_2O_2+0.83%ヒアルロン酸ナトリウム)の腫瘍内局注(3~6ml)は、月曜と木曜の放射線治療前に超音波ガイドにて行い、腫瘍内に微細な気泡の均一な分布を確認した。注射には24G針を用い、1%キシロカインを少量使用した。また、H_2O_2は、院内製剤での0.5ml入りバイアルを用いた。平均経過観察期間28.6ヶ月の現在、局所再発は1例のみ(82歳の症例で、42ヶ月後に局所再発を来し、TS-1+フェマーラにて制御中)であり、全例が生存中にて、遠隔転移も認めていない。有害事象としての放射線皮膚炎は、Grade Iが26例、IIが14例であり、当科での放射線治療単独の場合と比べて大差はない。われわれが開発した腫瘍内局注法は、ヒアルロン酸とともにパワードプラー超音波やCD44免疫染色など、最近の科学技術の進歩によって可能になったものと言える。KORTUC IIは非手術での乳房温存治療には最適の手法であると思われる。
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