研究課題
PC-3ヒト前立腺癌細胞は大気下で10GyのX線を照射した場合、約48時間後に約7%の細胞がアポトーシスを起こしていたが、低酸素下(5%酵素濃度)で同線量の照射を行った場合は約4%程度の細胞しかアポトーシスを起こさなかった。ところが、約直前に過酸化水素水(0.100~0.125mM)を投与した場合、約15%の細胞がアポトーシスを起こした。このことから過酸化水素水は、放射線感受性が劣る低酸素癌細胞のそれを、通常の酸素濃度化の癌細胞の感受性まで高めるのみならず、それ以上の感受性まで高める可能性が示唆された。また、過酸化酸素水を低酸素下で培養しているPC-3ヒト前立腺癌細胞の培養液に投与すると瞬時に培養液中の酸素分圧が上昇するのを確認した。しかしながら、過酸化水素水が癌細胞の放射線に対する感受性を高める原因として酸素分圧の上昇のみとするならば、アポトーシスを起こす癌細胞の割合は大気下で培養中の癌細胞以上になることはないはずである。このことから、過酸化水素水が低酸素細胞の放射線感受性を高める機序としては、酵素分圧の上昇以外のものが関与していることが示唆される。臨床においてしばしば直面する放射線治療抵抗性癌の原因の一つとして放射線感受性が劣る低酸素癌細胞の存在があげられるが、過酸化水素水はその問題を解決する薬剤の一つとなりうる可能性がある。
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International Journal of Radiation Oncology, Biology, Physics 75
ページ: 449-454
癌の臨床 55
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