過酸化水素水が低酸素下に存在する癌細胞の放射線誘発アポトーシスを増強するメカニズムの一つとして考えられているのが、過酸化水素水が分解することによって発生する酸素によって酸素分圧が上昇し、癌細胞が低酸素下から脱却するのではないかという仮説である。一般的に酸素分圧が0mmHgから30mmHgまで変化する領域で細胞の放射線感受性は大きく上昇し、それ以上酸素分圧が上昇してもほとんど放射線感受性には寄与しないことが知られている今回、PC-3ヒト前立腺癌細胞株をおよそ7.5mmHgの酸素分圧下で培養し、そこに異なった濃度の過酸化水素水を投与して、培養液中の酸素分圧がどのように変化するかを観察した。まず0.1mMの過酸化水素水を投与したところ、投与後1分経過した時点でも酸素分圧は投与前より平均7.7mmHg上昇し、その後緩やかに酸素分圧は低下し、5分後には平均6.2mmHg上昇した状態であった。次に0.2mMの過酸化水素水を投与したところ、投与後1分経過した時点では、酸素分圧は投与前より平均の過酸化水素水を投与したところ、投与後1分経過した時点では、酸素分圧は投与前より平均13.1mmHg上昇しており、その後緩やかに低下し、5分後には平均7.2mmHgの上昇であった。さらに0.4mMの過酸化水素水を投与したところ、投与後5分の時点で酸素分圧は投与前より29.3mmHg上昇した状態であった。以上のことから、過酸化水素水の投与によって培養液中の酸素分圧は確かに上昇することが確認できた。さらに過酸化水素水の投与による酸素分圧の上昇によって放射線感受性の改善を図るには~0.4mMの過酸化水素水の投与が必要であることが明らかとなった。
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