研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は"癌細胞の細胞接着機構に起因する放射線抵抗性因子を明らかにし、その分子やシグナル伝達を標的にした放射線感受性増感"を達成することである。今年度は昨年度に引き続き癌細胞の細胞浸潤や転移の制御に関与し、E-cadherinの機能を負に制御する作用のある接着因子であるDyasdherinと放射線感受性との相関を中心に検討して、以下の結果を得ている。放射線感受性が異なるヒト癌細胞培養細胞を用いて、Dyasdherinの発現と細胞増殖能および放射線感受性をin vitroで検討した。その結果、Dyasdherinの発現が高いと増殖マーカーを指標とした増殖能が高く放射線感受性が低い傾向があること。2)放射線照射によるDyasdherin発現の変化を検討すると、その局在には変化はないものの照射後に一時的にその発現が増強すること。3)この発現の変化に伴って、EGFRとそのシグナルの活性化が呼応して活性化すること、を確認している。これらの結果は、癌細胞の放射線応答に細胞接着因子が関わっている可能性を示唆するもので、その機序と関与するシグナル伝達経路を明らかにするため、現在研究をさらに継続しているところである。特に、平行して検討を行っている細胞増殖因子受容体と癌細胞の放射線応答との関係に注目している。EGFRおよびHER2の活性化とその局在の変化(細胞表面から核へ)が放射線照射で誘導されるが、その活性化を阻害すると局在の変化も修飾される。その結果、照射によるDNA損傷修復過程を阻害して放射線感受性変化(放射線感受性の増強)に関与することを確認している。これらのシグナル伝達の活性化や細胞死およびその生存に関わるメディエーターについて、細胞接着因子に起因するシグナルとのクロストークを中心に検討を行った。この解析で、主要な働きをしている分子やシグナル伝達が明らかにし、その活性化阻害や発現抑制で、癌細胞の放射線応答がどのように変化するかを確認して、治療標的としての可能性を検討し報告する予定である。
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