研究概要 |
急性肺障害の発症の時期と致命率は動物種により極端に異なることが判っている。今回の実験でエラスポールの肺障害防止効果を明確にするためにC57BL/6J(8週齢雌)の投与線量と致死率・肺障害の状況を様々な線量を投与することにより明らかにした。 各線量群ごとに15匹のマウスを用意し、そのうちの10匹は生存率を求めるために、残りの5匹は急性肺障害の組織学的観察のために用いた。今回の実験では14Gy, 16Gy, 18Gy, 20Gy, 22Gy, 24Gyを肺に1回照射した。14-16Gy照射群では照射後90日以上の経過観察にても死亡したマウスはなかった。しかし、18Gy照射群では照射後10日目より死亡例がみられ、照射後40日目で生存率が40%まで低下した。同様に20Gy照射群では照射後10日目、24Gy照射群では照射後6日目にそれぞれ生存率が40%まで低下した。 照射後6日目,10日目,14日目に肺を摘出して組織学的に急性肺障害の有無と程度を観察した。14-16Gyでは肺には目立った障害は生じなかった。しかし、18Gy以上では浮腫・充血・出血等の急性反応が見られ、その程度は線量の増加とともに増強し、かつより早期に生じた。よって本実験モデルとして20Gy1回照射が最も適していると考えられた。 そこで次に肺に20Gy照射後エラスポールを1, 1+3, 1+3+6, 1+3+6+12時間目に腹腔内投与した。1+3+6時間目にエラスポールを投与した群で最も生存率の改善が見られ、照射後6日目の肺障害の程度も軽微であった。ただし、おそらく放射線による肺障害は回復が急速に見られるために、エラスポールによる肺障害防止効果をより明確にするためには肺障害の組織学的解析の時期をこまめに行う必要があると考える。そのために平成23年度は照射後1, 3, 5, 7日目に肺組織を摘出して肺障害の推移をより詳細に解析する予定である。
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