C3Hマウスにマウス扁平上皮癌細胞であるSCCVIIを下腿に移植し直径8mmに達した時点で、重粒子線を照射し、さらに1週間後に尾静脈よりSCCVIIを2.5×10^5個注入し、その9日後に肺転移の個数を測定した。重粒子線照射により、尾静脈より注入した肺転移が抑制された。この肺転移抑制作用は下腿部腫瘍に対する線量が高くなるほどおよび下腿部腫瘍の大きさが小さいほど転移が大きく抑制された。しかし、最も肺転移抑制作用に影響したのは重粒子線のLinea Energy Transfer(LET)であった。非照射群で平均56(±15)個の転移数、重粒子線照射(+)群ではLET14KeV/μm(30Gy)で6.5(±31)個、LET77KeV/μm(30Gy)では1.3(±1.5)個であった(γ線30Gy照射群では18(±8.7であった)。すなわちLETが高くなると下腿部腫瘍の抗腫瘍効果以上に相乗的に肺転移抑制効果が認められた。これらのことから重粒子線は特有な肺転移抑制作用を有することが示された。また、この肺転移抑制効果はヌードマウスにおいても同様に認められた。これよりT細胞を介さない免疫系の効果が示唆された。さらに、重粒子線照射したマウス血清をin vitroにてSCCVIIの培養液中に添加すると腫瘍細胞増殖を抑制する作用が認められた。これより血清中に抗腫瘍作用を有する物質の存在が示唆された。
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