研究概要 |
本研究は、難治性癌に対する重粒子線治療よる転移抑制作用機序を明らかにし新しい治療法の開発の基礎作りを行うことが目的である。C3Hマウス扁平上皮癌SCCVIIにおいては、重粒子線照射により肺転移能が抑制される。培養したSCCVII細胞に直接in vitroで重粒子線照射した場合、転移能の指標となる遊走能および浸潤能は4Gyでそれぞれ10%および15%の抑制作用しか認められなかった。しかし、マウス下腿に移植したSCCVII細胞に重粒子線照射し48時間後に摘出した細胞では遊走能および浸潤能はそれぞれ30%,40%と著明に抑制が認められた。また、これらの抑制作用は重粒子線のLETが高くなるほど大きい傾向が認められた。以上の結果から、重粒子線により宿主の腫瘍免疫の活性化が促進されることで転移抑制作用が誘導されることが示唆された。そこで、腫瘍を移植し重粒子線照射したマウスの血液を採取しIL-2,4,6,12、INF-γ、TNF-αなどのサイトカインの濃度をELISAにて測定するとIL-2,12,INF-γの上昇が認められた。これらのことから細胞性免疫の活性化が示唆された。さらにヌードマウスを用い同様に転移抑制の実験を行ったが、C3Hと同様に転移抑制効果が認められた。これらのことから、重粒子線による転移抑制作用にはT細胞系ではなくNK細胞やNKT細胞系の活性化を介し転移抑制作用を示すことが示唆された。本年度は重粒子線による宿主腫瘍免疫反応としてNK細胞・NKT細胞等の役割を明らかにする。
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