研究概要 |
【目的】動脈閉塞症に対し自家静脈グラフトを用いたバイパス術が施行されるが、術後1年以内に生じるグラフト閉塞は解決すべき課題である。我々はこれまでにグラフト閉塞の原因となる内膜肥厚にMMP2が深く関与していることを見出した。しかし内膜肥厚過程でMMP2がどのように調節されるかは不明である。内膜肥厚部では局所的低酸素状態が形成されており、この変化がHIF1α等の低酸素応答分子を誘導し、VEGF、TSP-1といった分子を活性化した後、αvβ3インテグリンに作用するとの仮説をたてた。αvβ3インテグリンはMMP2プロモーター領域に発現しており、このメカニズムがMMP-2発現を調節しうる。本研究はMMP-2発現調節により静脈グラフト閉塞の原因となる内膜肥厚を抑制することを目的とした。 【本年度の成果】(1)ヒト血管平滑筋細胞(SMC)からの病態サンプルの回収;嫌気培養パウチを用いSMCを低酸素培養し、0、4、8、12時間、1、3,5、7日の8タイムコースで細胞を回収した(n=4)。回収した細胞からmRNAを抽出した後、cDNA化した。(2)サンプルの解析;real time PCRにて以下の遺伝子の発現解析を行う。1、MMP-2、2、MMP-9、3、HIF1α、4、VEGF、5、αvインテグリン、6、β3インテグリン。現在本研究を遂行中である。(3)ノックダウン用shRNAコンストラクトの作製;MMP-2調節メカニズムを証明するため、MMP-2、αvインテグリン、β3インテグリンのノックダウン実験を行う。このため各分子のRNAi遺伝子配列を検索し、DNA合成後shRNAプラスミドに組み込んだ。現在本プラスミドをコンピテントセルにトランスフォーメーションし、サブクローニング中である。 【まとめ】22年度は予備実験、実験試料の作製に多くの時間を費やした。23年度から本格的解析をスタートさせる。
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