ヒトのある種類の癌細胞株にTRPV2が高発現していることがわかった。そこでヒトの癌肉腫細胞株におけるTRPV2の機能検討において、この細胞ではEGF、HGF、などの増殖因子刺激によりTRPV2がトランスロケーションして、持続的なカルシウム上昇が生じる。さらに、TRPV2をノックダウンするとEGF、HGF刺激によるカルシウム上昇が抑制されることがわかった。増殖因子刺激により細胞内カルシウムが上昇することが判明した。また、このヒトの癌肉腫細胞では、細胞運動においてフィロポディア・ラメリポディアが形成されが、そこにTRPV2も局在する。また、さらに、細胞接着分子との検討ではTRPV2とβインテグリン、ビンキュリン、パキシリン等の細胞接着の構造と機能を制御するタンパク質と共局在することがわかった。インテグリンは、細胞表面で発現して、細胞接着機能を担うばかりでなく、細胞運動における膜のリサイクリングにおいても重要な機能を有していることが知られている。TRPV2も同様に効率よく細胞運動における細胞膜のリサイクリング機構によりその局在が調節されているものと考えられる。さらに、TRPV2は、その細胞接着部における、接着斑の崩壊に重要な機能を有することがわかりはじめた。そこで、接着斑における分子・およびその機能を可視化するプローブを作製して、この部位においてTRPV2の局在の変化とカルシウムがどのような刺激に対してタイナミックに変化するのかを現在検討している。
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