I型糖尿病患者に対する治療法として膵島移植が期待されている。Edmonton protocolによる膵島移植患者の追跡調査の結果、インスリン治療からの離脱の長期成績が20%台であることが問題点として考えられたが、その原因としては経門脈的な点滴により肝臓内に生着させる移植方法が挙げられる。我々は、米国の臨床膵島移植施設での経験を踏まえ、われわれが開発した三次元で合流分岐を繰り返すマクロ流路ネットワーク構造を持つポリ乳酸製の多孔質担体、および、腸間膜の動静脈吻合による血管ループを小型のポリカーボネイト製デバイスに収納し、内部に分離膵島を注入するタイプのハイブリッド型人工膵臓を膵島移植用デバイスとして検討してきた。しかし、前者は血漿を直接膵島と接触させる灌流式ハイブリッド型人工膵臓デバイスになり、培養液を灌流するならよいが、血液灌流は凝固反応を避けることが難しいため現実的に無理と考えられた。 膵島分離はMiami大学糖尿病研究センターで開発されたRicordi chamberに膵臓を収納し、LiberaseまたはCollagenaseを灌流することによって行われる。今年度は、まずRicordi型の装置を製作し、これを用いてブタ膵島の分離、精製を行った。膵島の精製には血液成分遠心分離装置COBE2991が濃度勾配遠心分離ができる唯一の器械なので一般に用いられるが、新しく開発されたという卓上型遠心分離装置SEPAXは濃度勾配遠心分離ができる。そこでこの装置を用いてブタの膵島分離精製を繰り返し行い、SEPAXの条件設定を行った。分離開始後25本のコニカルチューブに膵臓の細胞が採取されるが、そのうち7~12番目のコニカルチューブに膵島が集中的に現れることが明らかになり、この層を集めて移植用膵島を得ている状況である。
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