I型糖尿病患者の治療法として期待されている膵島移植の長期成績を改善する目的で、Ricordi型の膵島分離装置を製作し、これを用いてブタ膵島の分離、精製を行った。膵島の精製には卓上型遠心分離装置SEPAXを用いてブタの膵島分離精製を繰り返し行い、その条件設定を行った。分離開始後25本のコニカルチューブに膵臓の細胞が採取されるが、そのうち7~12番目のコニカルチューブに膵島が集中的に現れることが明らかになった。本年度は、腸間膜の動静脈吻合による血管ループを小型のポリカーボネイト製デバイスに収納し、内部に分離膵島を注入するタイプのハイブリッド型人工膵臓デバイスを製作することが目標であった。大動物の膵島分離に必要なSEPAXは高価なため購入できず、また貸与使用の機会は限られるため、我々医学部肝胆膵・人工臓器移植外科と疾患生命工学センター再生医療工学の共同研究であるラット肝癒着モデルを用いた腹膜癒着防止材料の開発の実験と併行して、ラットの分離膵島実験を開始した。しかし、研究代表者の成瀬が期間中に民間病院に異動となったため、本研究は現時点において廃止となった。共同研究者である疾患生命工学センター准教授伊藤大知と共に今後の研究の継続を検討中である。
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