研究課題
ポリフェノール(エピガロカテキンガレート=EGCG)の移植免疫反応抑制効果を、主にマウスの組織を用いたリンパ球共培養法と膵島移植実験系を用いて評価した。その結果、EGCGはアロ移植系の免疫拒絶と移植片対宿主の両方の免疫反応への抑制効果を示した。免疫拒絶反応に対しては、EGCGが移植片の表面抗原に結合し、免疫カムフラージュ様の作用を示すことを、サイトメトリーを用いた処理細胞の表面抗原解析で明らかになった。その裏付けとして、処理細胞の表面抗原提示は阻害されるが、抗原蛋白の産生と酬A発現がEGCGによって抑制されない。興味深いことに、EGCGは阻害作用において抗原特異性を示し、特にCD28やCD3ε等の抗原決定基による副刺激がEGCG処理により阻害され、細胞間におけるTCR刺激下で、応答する側の細胞に対して不完全刺激を与え、末梢リンパ球がアポトーシスを起こすことが判明した。これらのデータは、EGCGがアロ拒絶反応に対して反応側の細胞に直接免疫活性を低下させずに、細胞間シグナル伝達を介した二次的な免疫応答を抑制することを示す。その効果は処理膵島を宿主に移植後、約7-10日で減衰した。そこで移植後7日以降の免疫抑制効果を持続させるべく、EGCGをレシピエント腹腔内に追加投与したが、安定した抑制効果を見なかった。従って当初計画していた中・大動物を用いた実験に替えて、アロ免疫両面の反対側にあたる移植片対宿主反応(GVHD)に対するEGCGの効果の詳細な解析を行った結果、予測通りGVHDの初期段階で、抗原決定基特異的な不完全刺激による免疫抑制効果を示し、ドナーリンパ球へのEGCG投与が刺激を発信する側の細胞に対しても副刺激の阻害による免疫抑制作用を持つことが判明した。これらのことから、EGCGは、免疫表面抗原決定基に対する特異性を持つという点で、移植免疫抑制剤の開発におけるモデル化合物の可能性を持つことが解った。
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Cell Transplantation
巻: (In press)
DOI:10.3727/096368911X623934
膵臓
巻: 26 ページ: 197-203