本研究の目的は樹状細胞とT細胞間の重要な副刺激因子であるB7-DC・B7-H1/PD-linteractionを制御することで、消化器癌肝転移をターゲットとした次世代型免疫療法の開発をすることである。これは、近年の免疫学の進歩により明らかとなった樹状細胞・T細胞間の適切な刺激をB7-DC融合蛋白やB7-H1、PD-1中和抗体でコントロールし、T細胞の適切な活性化とメモリー化を図ることを目的としており、あらゆる免疫療法に広く応用可能な治療法の開発である。真のトランスレーショナルリサーチを行う為、まずマウスの肝転移モデルを確立し、安定したサバイバルが得られるようにする。さらに転移のタイプが孤立性のものと多発性のものの両方を作成し、マウスの癌の状態ごとに免疫療法の有効性を検索できるようにする。ここまでの研究はすでに着手しているが、早急に完成させたい。その後、肝臓、脾臓から単核球を分離し各免疫担当細胞のポピュレーションをフロサイトメトリーで調べ、その免疫担当細胞で産生されるサイトカインを細胞内染色で検索する。これを現在ナイーブなマウスでコンデション作りの予備実験段階のため、実際の応用を徐々に始める予定である。本研究が独創的かつ優位であることとして以下の点が上げられる。従来の免疫療法とはアプローチも用いる免疫活性化剤も全く異なるユニークな治療法であること。癌腫を問わず、応用可能であり、癌抗原が同定されたものとの抗原特異的免疫療法との併用も可能であること。世界的な潮流の一つであるT細胞の活性化後の無力化を防ぐ療法の一つでもあること。この融合蛋白は臨床応用可能となる可能性が高いため、真の意味(狭義)のTranslational Researchであること。ノックアウトマウスの結果や、関連分子のB7-H1における報告から、肝臓での高い免疫効果が期待できること。良い意味でユビキタスではない分子のため、副作用が少ないことが予想されること。免疫療法の最大の利点の一つのT細胞のメモリー化がその特性から期待されること。 また抗体療法とは違う融合蛋白を使う点、さらにその変異型を用いる点が従来の免疫療法と大きく異なる。 ターゲットとなるT細胞を活性化するのみでなく、潜在的にはその活性化を遷延させることが可能で、通常はネガティブなシグナルをブロックするやり方をとるのに対し、相対的にポジティブなシグナルの増強でこれをさせようとする。この理由はネガティブなシグナルをブロックするやり方で起こりやすいAutoimmune類似の副作用を出さないようにするためである。
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