研究概要 |
[目的]肝移植をはじめ臓器移植後は拒絶反応抑制のために免疫抑制剤の服用を一生涯必要とする.免疫抑制剤の長期的服用は,経済的な負担のみならず,悪性腫瘍の発生,易感染性,腎不全などの副作用が問題となる.移植肝は心臓や腎臓などと比較して拒絶反応が起こりにくい臓器と考えられており,免疫抑制剤を中止しても約3割に全く拒絶反応が起こらないことが知られている.本研究においては,肝移植後の安全で確実な免疫抑制剤からの離脱プロトコール作成の基礎的、臨床的検討を行うことを目的とする. [方法]生体肝移植術後3年以上経過した患者で、ドナーとレシピエントが同時に採血可能な症例を選択し、採血しリンパ球を分離、リンパ球混合培養反応(MLC)を行った.ドナーに対するMLCが第3者に対するMLCよりも低下していれば、ドナーに対する部分的な免疫寛容状態が存在するとして、安全に免疫抑制剤が減量可能と仮定される.また、これまでの生体肝移植346症例のドナーとレシピエントのHLAの組み合わせを検討し、移植後肝不全の頻度とHLAのミスマッチとの関連を検討した. [結果]これまでに11例のMLCを行った.これを62例の術前MLCと比較したが、明らかなMLCの低下は認められなかった.この結果から肝移植後の免疫寛容の指標にはMLCは適当ではないことが示唆された.しかしながら移植後肝不全の頻度とHLAのミスマッチ数との関連が認められた.またHLAが完全一致する場合には逆に移植後GVHDの危険が高いことが判明した.HLAミスマッチ数が多い組み合わせの生体肝移植では免疫抑制剤の減量に慎重な判断が必要であることが示唆された.以上の結果を論文にまとめ、現在英文雑誌に投稿中である.
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