研究概要 |
消化器における腫瘍内浸潤メモリーT細胞発現の臨床的意義 膵癌,胆道癌,食道癌,胃癌,転移性肝癌の切除標本を用いて,メモリーT細胞のマーカーとしてCD45RO染色を行い,イメージングアナライザーを用いて定量化を行った.メモリーT細胞腫瘍内浸潤と予後,再発形式,臨床病理学的因子との間に有意な関連を認め,臨床的意義が明らかとなった.すなわち,腫瘍局所に浸潤したメモリーT細胞の多いのものほど,術後の予後は良好であり,再発も有意に抑制されていることを示唆するデータが得られた.また腫瘍局所の免疫活性とも相関した. 消化器におけるT細胞Negative Signal分子発現の臨床的意義 難治性消化器癌の代表である膵癌において,新規T細胞Negative Signal分子であるB7-H3について免疫染色,Real-time PCRにて検討し,その発現の臨床的意義を明らかとした.またマウスモデルを用いた研究においても,B7-H3阻害による有意な抗腫瘍効果を確認し,新たな治療標的分子となり得ることを明らかとした.さらにB7-H3阻害と化学療法との相乗的な抗腫瘍効果についても確認し,臨床上の有用性も示唆された.治療中の明らかな有害事象は認めなかった. 以上の結果から,T細胞,特にメモリーT細胞の能動的誘導が,癌治療において重要であることが示唆され,T細胞Negative Signal阻害がその手段として,有用であるかを今後検討していく予定である.
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