研究概要 |
■術前治療によるメモリーT細胞誘導による再発抑制効果 術前(腫瘍切除前)の腫瘍抗原が豊富な段階で,抗体治療や化学療法との併用を行うことで,より効率的に腫瘍特異的メモリーT細胞が誘導されるのではないかと仮定し,これを検証した.腫瘍接種後,腫瘍径が10mm以上に達した後に,一定期間抗体を投与し,その後に腫瘍を外科的に完全切除.切除後100日以上経過した時点で,同系腫瘍および異系腫瘍を再接種して,生着率を検討した結果,同系腫瘍のみが生着しないかあるいは自然退縮する現象を確認した. ■腫瘍峙異的メモリーT細胞の腫瘍増殖・転移抑制効果 上記にて誘導し得たメモリーT細胞を,脾臓・リンパ節からFACS soringにより回収し,同系担癌免疫不全マウス(RagKO>に養子移入し,腫瘍増殖抑制効果および転移抑制効果を検証中である.NaiveT細胞移入との比較を行い,腫瘍抗原特異性および抗腫瘍効果の強度をin vivoにおいて検証する予定である. 上記の研究成果は,化学療法が発達した今日もなお治療抵抗性あるいは難治性悪性腫瘍に対する新たな治療法となり得る可能性がある.また外科手術と組み合わせることで,腫瘍特異的メモリー細胞の能動的に誘導することができれば,患者負担の少ない新たな術後再発防止策を開発し得ることにもなる可能性がある.その点からは医療経済的にも患者負担の点からもその意義は大きく,研究遂行の重要性は高いと考える.
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