研究概要 |
(目的)昨年度は安全性を確認済みのペプチドの合計30種類から、3種類のHLA-A2-結合ペプチド(ppMAPkkk-432,HNRPL-501,およびWHSC2-103)と1種類のHLA-A24-結合ペプチド(SART3-109)がHLA-A26拘束性に細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導することを明らかにした(Cancer Sci)。本年度は、新たにSART3、Lck、サバイビン(survivin)、およびWilms腫瘍遺伝子産物WT1を対象とし、がん患者末梢血の抗体およびT細胞に認識されるペプチドを選別する。(方法)抗体の測定はルミネックスを用いたフローメトリ-法で、細胞傷害性T細胞はELISPOTで行った。(結果)in silico analysisによりHLA-A26結合性のペプチドをそれぞれ55、35、26、および20種類合成し、がん患者血漿でスクリーニングし、抗体が認識するペプチドを選択した。SART3由来のペプチド55種類を前立腺がん患者44名の血漿でスクリーニングを行ったところ90%以上の患者で陽性になったペプチドは7種類(SART3-162,-171,-287,-377,-416,-717,および-837)であった。Lck由来ペプチドはそれぞれ18例ずつの膵がん、乳がん、および肝がんの患者血漿でスクリーニングを行ったところ、90%以上の患者で陽性になったペプチドは35種類のうちそれぞれ6、7、および5種類同定された。これらのうち3種類のがん種で共通に高頻度で検出されたペプチドはLck-258,-417,-467、および-488の4種類であった。サバイビンは6種類(SUR-b4、-b13,-b53,-b118,-v53,-v57)、WT1は2種類(WT1-230,-478)のペプチドが認識された。一方、これらのペプチドによるCTL誘導能を調べた結果、陰性対照と比べて有意(p<0.05)に陽性となったペプチドとしては、SART3-416,-703,-731,SUR-v53,-b20,-b118,-b153,WT1-313,-343が検出された。(考察)CTL誘導能が認められたペプチドはがん患者末梢血に高頻度(それぞれ93、73、70、96、65、96、83、78、および80%)に抗体が認められるものが多いことが示唆された。HLA-A26の患者は日本人で約20%存在し、HLA-A2,-A24,-A3スーパータイプとのペプチドと合わせると日本人の約99%をカバーできることになる。
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