21年度はラット末梢血幹細胞(PBSC)を分離し、糖尿病ラットに膵島と同時移植する実験を行った。まず、PBSCドナーラットに200ug/kgのヒトGCSFを10日間投与し、実験に十分な量のPBSCが得られるかどうかを検討した。我々の以前の成果では間葉系幹細胞(MSC)では1匹の移植実験に1×10^7個のMSCを必要としたが、ヒトGCSFではラットでは十分な白血球増加が認められず、そのため、十分なPBSCを得ることができなかった。したがって、ラットではPBSCの分離を断念し、末梢血単核球を膵島と経門脈的に肝内に注入することと計画を変更した。 ストレプトゾトシン(STZ)70mg/kgを静注するとラットはβ細胞が破壊され、インスリン分泌能が低下、速やかに糖尿病となる。STZ投与7日後の糖尿病ラットをレシピエントとし、同系膵島の移植を行うと、800個の膵島では80%糖尿病が治癒したのに対し、600個の膵島では糖尿病が治癒するラットはいなかった。したがって、600個の膵島と末梢血単核球を同時移植を行ったが、期待する糖尿病の治癒は得られなかった。 ラットでは期待すPBSCが得られず、十分な実験成果が得られなかったことから、ビーグル犬を用いた大動物実験をすでに開始している。現在はヒトGCSFをビーグル犬に投与し、細胞分離装置COBE spectraによるPBSC分離に着手しているところである。
|