研究分担者 |
楠 正人 三重大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (50192026)
毛利 靖彦 三重大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (70345974)
内田 恵一 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (30293781)
荒木 俊光 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (70343217)
吉山 繁幸 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (60444436)
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研究概要 |
我々はこれまでに、宿主・腫瘍相乗的サイトカイン産生連鎖機構が「癌悪液質」の形成に大きな役割を果たしていることを明らかにしてきた。このサイトカインプロファイルの変化の中で最も上流に位置するのはInterleukin(IL)-1とIL-6cascadeであることも明らかとなった。本研究では大腸癌患者における癌悪液質を評価し、IL-1receptor antagonist(ra)を用いた分子標的治療が担癌宿主の宿主-癌組織間の偏ったIL-1-IL-6cascadeを正常化し、宿主を癌悪液質から離脱できる可能性を示す。大腸癌患者300名の血中CRP値、血中アルブミン値,リンパ球数,術前体重減少率の検討により血中アルブミン値がCRP値と最も強く負に相関していることが判明した(r=-0.411, p<0.0001)。CRP,アルブミンの各カットオフ値を0.5mg/dL, 3.5g/dLとし,大腸癌患者を4群に分類した。A群(CRP陰性かつアルブミン値正常), B群(CRP陰性かつアルブミン低値), C群(CRP陽性かつアルブミン値正常), D群(CRP陽性かつアルブミン低値)。大腸癌stageIVではC・D群は約60%を占め, StageIIIでは約30%, StageI,IIでも15~30%であった。この血中CRP値、血中アルブミン値による癌悪液質のスコアリングは、大腸癌根治術後の再発リスクと関連していた。大腸癌組織及び正常組織中のIL-1beta、IL-6値はD群では大腸癌組織中に炎症性サイトカインが正常組織の4~5倍量発現していた。In vitroでは、大腸癌細胞株にIL-1betaのみ、IL-1beta/IL-1ra、IL-1raのみの添加後、1h, 3h, 6h, 12h, 24h後に上清を採取しsoluble IL-6, soluble glycoprotein130を測定すると、IL-1raのみの添加後でcontrolより低発現、IL-1betaのみ添加後では高発現、両方添加ではcontrolよりやや高発現であったが、IL-1betaのみ添加より低発現であった。以上より、大腸癌患者の血清中増殖因子が癌悪性度だけでなく癌悪液質に関わることから、抗炎症性サイトカインによる炎症性サイトカイン制御すなわち、IL-1raによる増殖因子の制御が、癌の進展のみならず、癌悪液質改善に寄与する可能性があることが示された。
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