研究概要 |
ホルモン療法による細胞死の態様(オートファジー、アポトーシスなど)を評価するため、術前ホルモン療法(アロマターゼ阻害剤)の臨床試験検体(治療前、治療後)を用い、オートファジー関連蛋白であるbeclin1, LC IIIとアポトーシスマーカーであるTUNEL,M30の染色を施行した。ホルモン療法前後において、アポトーシスマーカーの発現は変化していなかったが、オートファジー関連蛋白は共に上昇を認めた。また、間質においてもアポトーシスマーカーの変化は認めなかったが、オートファジー関連蛋白は共に増加していた。以上より、ホルモン療法により、腫瘍のみでなく間質においてもオートファジーが誘導されることが示された。一方、ホルモン療法前後の細胞増殖の評価としてKi67染色を行ったが、ホルモン療法前後で減少が認められ、オートファジーの増加とは独立していた。治療効果との関連においては、Ki67は臨床効果の有無にかかわらず減少が認められたが、オートファジー関連蛋白は臨床的効果が認められる症例で増加が強い傾向が認められ、ホルモン療法の治療効果にオートファジーが関与していることが示唆された。今まで、ホルモン療法の効果は主に細胞増殖の変化により評価されていたが、本研究によりオートファジーの誘導を評価することにより、より詳細に治療効果を評価できる可能性が示された。また、オートファジーの治療効果への関与は、オートファジー耐性が治療抵抗性に関与している可能性を示唆しており、治療耐性克服へつながる可能性がある。以上の結果については現在論文作成中である。また、オートファジーに関連し減少するとされるCaveolin1の発現を調べ、間質におけるcaveolinの発現低下が予後と関連すること、またホルモン感受性乳癌とそれ以外の乳癌における遺伝子不安定性(CNV)の違いについて検討し、論文報告した。
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