Toll様受容体(TLR)は、免疫応答の誘導において重要な役割を担っているが、この受容体は、多種類の癌にも発現している。そこで、当該研究では、前立腺癌に焦点を当て、TLR3のリガンドであり、癌免疫療法のアジュヴァントとして応用できるpoly(I:C)が、前立腺癌細胞に及ぼす抗がん効果とその機序について検討した。poly(I:C)は、TLR3を発現した一部の前立腺癌細胞(LNCaP)に対して、抗がん効果を示した。その作用の1つは、細胞死の誘導であり、カスペース依存性のアポトーシスが生じていた。また、アポトーシス以外の細胞死として注目されているオートファジー(自食作用)も生じていることを、GFP-LC3プラスミドを発現させた癌細胞でのGFP-LC3fociの形成により確認できた。一方、第2の機序として、poly(I:C)処理で細胞死しなかった前立腺癌細胞では、増殖能が低下していることが、Ki67の発現やBrdUの取り込み試験で確認された。LNCaP前立腺癌細胞は、PTENを欠損しているためにPI3K/Akt経路が常に活性化されているが、poly(I:C)処理によりAktのリン酸化が抑制をされることを見出した。以上の結果より、poly(I:C)のLNCaP前立腺癌細胞に対する効果は、オートファジーを伴ったアポトーシス(細胞死)とともに癌細胞の増殖を抑制すること、さらに、これらの機序として、癌細胞でのPI3K/Akt経路の抑制が関与していることが明らかにした。
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