研究概要 |
近年多方面にわたる分子生物学的癌研究の蓄積により、肺癌の様々な臨床的病態が、腫瘍組織だけではなく、肺癌患者(宿主)の要因も重要であることが判明してきた。宿主における免疫系バイオマーカーの発現も、化学療法や免疫療法など癌治療に対する効果への影響が考えられる。そこで今回我々は、非小細胞肺癌の臨床病態や治療反応性などを解明するために、腫瘍組織だけでなく、肺癌患者(宿主)の癌関連バイオマーカーも同時に包括的に解析を行う。そして、肺癌発症の要因やそれぞれの発生要因に基づいた治療方針の検討などを図る。 研究期間内に我々は治療前末梢血リンパ球と腫瘍組織(外科的切除または縦隔鏡や気管支鏡などにより採取)におけるバイオマーカーの診断を行ってゆく。バイオマーカーとしてはp53,K-ras,EGFRなどの癌遺伝子及び癌抑制遺伝子の遺伝子変異、p53,p16,E2F1,TS,EGFR,BRCA1,Wnt1,Wnt5aなどの癌遺伝子及び癌抑制遺伝子の発現、及びMEGA familyとMucin familyなどの免疫系マーカーの発現を評価し、症例の蓄積を図っている。そして、それらバイオマーカーの治療前末梢血リンパ球と腫瘍組織における遺伝子変異と発現をマッチング評価し、宿主と発生する肺癌組織の関連を明らかにする。更にこれらの中で、臨床に有意義と判定したバイオマーカーのプローブをのせたカスタム化cDNAマイクロアレイも作製する。そして最終的にはこれらの検討を通じて、肺癌罹患へのリスク及び肺癌治療への反応などについて、臨床的に有意義なバイオマーカーを同定する。
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