研究概要 |
本年度の研究計画と成果は次のようである。 1. リンパ球におけるVEGFR2発現プロファイル作成: 末梢リンパ球、癌性胸腹水リンパ球、大腸癌組織浸潤リンパ球において、VEGFR2がCD4+T細胞、特にFOXP3陽性およびCD25高発現CD4+T細胞に選択的に発現していることを明らかにし、新知見として発表した(Suzuki,Morisaki,Katano et al. Eur J Immunol 40:197, 2010)。 2. VEGFによるTreg細胞の誘導: VEGFR2陽性および陰性CD4+T細胞をセル・ソーターにより分離し、遺伝子組み換えVEGFによるTreg細胞誘導に及ぼす影響を解析した。用いたVEGF濃度(50-200mg/mL)では、VEGFR陰性細胞からのTreg細胞の誘導は確認されなかった。また、VEGFR2陽性細胞数の有意な増加は認められなかった。しかし、VEGF産生肝癌細胞との共培養でVEGFR2陽性T細胞が増加し、抗VEGF抗体であるアバスチンで抑制される症例があることから、現在、内因性VEGFの系を用いて追加実験中である。 3. VEGFによるVEGFR2陽性Treg細胞の遊走試験: セル・ソーターによる分離したVEGFR2陽性CD4+T細胞および陰性CD4+T細胞を用いて、チャンバー法にて遊走試験を繰り返しているが、遊走亢進の場合と抑制の場合があり、一定の結果が得られていない。したがって、Treg細胞の遊走因子を下室に添加した系で同様の実験を継続中である。 4. 次年度の前倒し: 1) 手術摘出大腸癌組織をFOXP3およびVEGFR2の蛍光二重免疫組織染色し、VEGFR2陽性Treg細胞の浸潤を定量的に解析中である。現時点では、末梢血に比べ組織中ではVEGFR2+FOXP3+リンパ球の比率が高い傾向を示している。 2) VEGFR2陽性Treg細胞の生物学的役割を推測するために、免疫細胞療法施行中の症例における臨床効果との関連解析をスタートした。
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