本研究の目的は抗癌剤耐性獲得という、癌の臨床上重要な現象に焦点を当てることにより、癌幹細胞理論の是非を検証を行うことである。癌の多様性、浸潤・転移能力の獲得、薬剤耐性の獲得等を説明する理論として、「癌幹細胞理論」に基づいた研究が昨今内外で盛んに行われており、特に抗癌剤耐性獲得機序を説明する上で、その理論的根拠となる有力な候補として考えられている。平成23年度は、これまでに確認してきた基礎研究の結果が、臨床検体を用いた解析により実際に即しているか否かを検討した。我々は術前化学療法を行う前に、全例マンモトームを用いた生検を行っているが、この方法は超音波画像で病変を確認しながら針を刺し入れ、針の側面にある吸引口で組織を採取する。この吸引システムにより狙った病変部の組織だけを採取でき、1回の穿刺で多数の組織が採取できるため、フローサイトメトリー施行に十分な検体が採取可能である。これにより、 (1)化学療法投与前 (2)XT終了後、FEC投与前 (3)手術時検体 の3回検体採取を行い、CD44(+)CD24(-)ALDEFLUOR(+)分画の増減の推移を検討する予定としていたが、中間(2)の検体採取は倫理的配慮によりこれを施行することが不可能であった。これら採取された検体に対し、Mammosphere forming assayや異種移植モデルによる生着能・多分化能の確認を行うとともに、各分画のRNAを抽出し、幹細胞マーカーや上皮マーカー・間質マーカーの検討を行った。今後はマイクロアレイを用いた網羅的解析を計画する。また、上記解析を当科で施行中の術前ホルモン療法症例においても行い、化学療法との比較検討を施行する。
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