研究概要 |
背景 乳酸菌の一種であるLactobacilus casei(L.casei)は、グラム陽性桿菌で通性嫌気性菌である。ヒトの口腔内や胃腸管に内在する非病原性常在菌で、発酵食品や乳酸菌製剤に利用されている。今回の研究では、L.caseiを偏性嫌気性菌にした変異株KJ686を用いた。L casei KJ686菌自体が抗腫瘍効果を示したのでその原因を追究した。 方法 1)回収上清は限外ろ過フィルターを用いて分子量の違いにより分離し分画を得た。 2)活性が認められた1KDa以下の分画を酢酸エチルと混合し、遠沈し水層と有機層に分けた。その後、ドラフトチャンバー内で乾燥させ、DMSOに溶解し、以後の実験に用いた。 3)さらに種々の性質を有するカラムで分画を試みた。 結果 1)L. casei KJ686をLLC担がんマウスに静注したところ、投与数日以降は腫瘍組織でのみ検出されるが、腫瘍組織局所でのサイトカインやNK細胞,マクロファージなど、抗腫瘍免疫効果の亢進を示唆する結果は得られなかった。 2)菌由来の抗腫瘍効果をもたらす物質の検索同定実験を行ったところ、L. casei KJ686の培養上清にLLC培養細胞の増殖を阻害効果が認められた。 3)菌培養上清を分子量にて分離したところ、1KDa以下の分画に細胞増殖阻害活性を認めた。 4)この分画を熱処理したが、活性は維持された。また、酢酸エチルを用い極性の違いで分けたところ、水槽に活性が認められた。さらに有効成分の同定作業を進めたが、活性物質が複数に及ぶのか、さらに分けると活性を示す分画が消失した。抗腫効果を有する菌由来物質の特定は今後の課題として残された。
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