HMGA1aのRNAへの配列特異的結合という新規機能がエストロゲン受容体(ERα)の異常スプライシングを惹起するかどうか、また、そのRNA結合を阻害することにより乳癌の新たか治療の開発を目標としております。 HMGA1aによるERαの異常スプライシングに関しましては、HMGA1aのRNA結合配列と核移行シグナルを付加したマイクロRNA「おとり核移行マイクロRNA」を作製し、MCF-7乳癌細胞に導入、内因性のHMGA1aの機能を阻害し、ERα46 mRNAアイソフォームの発現を阻害、この細胞にHMGA1aを再び発現するとERα46 mRNAの発現を認めました。この「おとり核移行マイクロRNA」の安定発現株を作製しましたところ、エストロゲン依存性にアポトーシス誘導を認めました。来年度は、これら発現株をヌードマウスに移植し、生体内での腫瘍増殖への効果を検討します。生体内の効果を認めれば、「おとり核マイクロRNA」によりエストロゲン依存性に乳癌細胞のアポトーシスを誘導することが可能となり、現在のエストロゲンを枯渇させる治療の新たな撰択肢になり得ると信じている。 HMGA1aによるERαの異常スプライシングの詳細な機序に関しましては、ERαエクソン1Aの正規5'スプライス部位の33塩基対上流にHMGA1aのRNA結合部位(プレセニリン-2のHMGA1a結合部位と2塩基対のミスマッチ)が存在し、隣接する偽5'スプライス部位にU1 snRNPを固着させ、正規5'スプライス部位の機能喪失により異常エクソン除外誘導、ERα46 mRNAが発現することを、RNAゲルシフト、ソラレンUVクロスリンキング、RNaseHプロテクション解析によりつきとめました。 HMGA1aとその結合配列がスプライシング因子U1 snRNPにどのように影響するか、は詳細に検討し、2010年5月発刊のMolecular and Cellular Biologyに公開され、巻頭のスポットライトで注目すべき論文として紹介されます。
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