HMGA1aのRNAへの配列特異的結合という新規機能が、エストロゲン受容体(ERα)の異常スプライシングを惹起するかどうか、また、そのRNA結合を阻害することにより乳癌の新たな治療の開発を目標としております。 昨年度は、HMGA1aの配列特異的RNA結合配列と核移行シグナルを付加したマイクロRNA「おとり核移行マイクロRNA」により、MCF-7乳癌細胞においてHMGA1aがERαの異常スプライシングを惹起し、安定発現株が、エストロゲン依存性にアポトーシス誘導すること、また、HMGA1aま、ERαエクソン1Aの正規5'スプライス部位の33塩基対上流にHMGA1aのRNA結合部位(プレセニリン-2のHMGA1a結合部位と2塩基対のミスマッチ)が存在し、隣接する偽5'スプライス部位にU1 snRNPを固着させ、正規5'スプライス部位の機能喪失により異常エクソン除外誘導、ERα46mRNAが発現することを、RNAゲルシフト、ソラレンUVクロスリンキング、RNaseHプロテクション解析によりつきとめました。「おとり核移行マイクロRNA」安定発現株をヌードマウスに移植し生体内での腫瘍増殖への効果を検討する予定でしたが、マイコプラズマ感染が判明し、その除去、安定発現株の再作製に手間取りました。最近、非感染安定発現株作製に成功し、ヌードマウスへの移植予定です。HMGA1aとそれにより惹起されるERαのアイソフォームERα46を乳癌患者の組織サンプルにおいて解析中であります(研究分担者:内海教授)。前半のHMGA1aのスプライシング機序は、ヒトにおいては、まったく新規のものであり論文投稿予定であります。後半のヌードマウス実験は、臨床サンプルでの発現とともに、まとめたいと考えております。 HMGA1aによる異常スプライシングの興味深い標的としてHIV-1が判明したので論文を作製し、2011年2月、BBRCにオンラインにて公開されています(DOI:10.1016/j.bbrc.2011.02.059)。
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