研究概要 |
癌細胞周囲間質においては,ヒアルロナン含有量の高いmatrixが形成されることにより,がん細胞が転移,遊走能を獲得する.ヒトにおいては,血清由来ヒアルロナン関連蛋白(Serum-derived Hyaluronan Associated Proteins, SHAP)がヒアルロナンと共有結合(SHAP-HA複合体)し,互いの構造や,その維持に重要な役割をはたしている.以下に病期に照らし合わせたSHAP-HA複合体の血中濃度の比較を示す. 健常人 (女性)(16人) -0.131±0.085 Stage I~III (39人) 0.104±0.184 (P=0.01)(A) Stage IVまたは再発 (34人) 0.428±0.369 (P=0.01)(B) 単位:血中log(SHAP-HA複合体) A:健常人vsStage I~III, B:Stage I~IIIvsStageIVまたは再発 すなわち,病期の進行に伴い,SHAP-HA複合体の血中濃度も上昇し,かつ,「Stage IVまたは再発」が最も高値であることより,転移にも関与することが示唆された. また免疫染色の追加実において,SHAP-HA複合体は腫瘍周囲の細胞間質に存在するが,接着因子としてのCD44はそのさらに外側にみられた.CD44の本来の役割を考慮すると,これら2者で,悪性腫瘍の微小環境形成に関与する可能性が示唆された.
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