研究課題
【目的】Heat shock protein 70(Hsp70)は、熱障害や様々なストレスを受けたときに細胞内蛋白の変性を防ぎ、細胞増殖等を保護するべく誘導される。ある種の病態ではHsp70が体液中にも検出され、それに伴い抗Hsp70抗体も高率に検出される。耐術能の観点から術前に抗Hsp70抗体を測定し、周術期のパラメーターや、合併症との関係を検討した。【方法】対象は食道癌手術症例53例。Anti-Human Hsp70 ELISA Kit(Stress Xpress)を用いて患者の末梢血中の抗Hsp70抗体を測定した。これを濃度で2群に分けて病理学的因子との相関を調べ、また周術期の炎症性マーカーや肝機能、腎機能、動脈血ガス測定値、および挿管期間、ICU入室期間、合併症などとの相関を解析した。【結果】食道癌患者53名の平均の抗Hsp70抗体濃度は191.1μg/mlで19名の非癌患者の平均283.1μg/mlと比較して有意に低値であった(p<0.05)。191μg/ml以上を高濃度群(H群)191μg/ml未満を低濃度群(L群)として2群間で解析した。その結果腫瘍の深達度、リンパ節転移、遠隔転移などの因子との相関はなかった。炎症マーカーの白血球数、CRP値、発熱との相関はなかった。また、肝機能、腎機能、動脈血でのpCO2,pO2、BEなどに有意差はなかった。挿管期間、ICU入室期間とも相関がなかったが、縫合不全や創感染がL群で有意に高率であった(p<0.05)。【結語】食道癌患者における術前の抗Hsp70抗体価は術後合併症発生率と関係があり、術後の修復機転に重要な働きを持つことが示唆された。これにより、事前に合併症の可能性の高い患者を予測できる可能性とともに、術前に温熱などを加え、Hsp70発現を高めることにより術後合併症を軽減できる可能性が示唆された。現在HSP110発現と手術切除後検体の病理学的検討を行いその関連について2011年に報告した。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Hepatogastroenterology
巻: 58 ページ: 1555-1560
10.5754/hge09758
巻: 58 ページ: 1958-1962
10.5754/hge11208
Ann Surg Oncol
巻: (Epub ahead of print)
10.1245/s10434-011-2097-1