研究課題
【目的】CD24は、glycosylphosphatidylinositol anchorを介し細胞膜と結合したムチン様の構造を示す細胞表面蛋白である。腫瘍組織におけるCD24の機能についてこれまでに、fibronectinやcollagen、lamininとの細胞接着機能や、Ral GTPaseによる制御などが報告されているが、未だ不明な点も多い。消化器癌、CD24の発現とその意義について検討し、腫瘍内でのCD24の機能について解析を行う。【方法】胃癌の手術摘出標本から得たホルマリン固定切片(30例)を用いてCD24発現を免疫組織化学染色にてCD24発現を検討し、臨床病理学的背景因子との関連を検討した。腫瘍細胞の10%以上が染色されるものをCD24(+)、10%未満の場合をCD24(-)と判定した。また、連続切片においてKi67染色を行い、CD24との相関について検討を行った。【結果】正常の胃粘膜ではCD24は細胞膜に弱く染色された。腫瘍組織においては高分化な部位では細胞膜優位に、より低分化な部位では細胞質優位に染色される傾向にあった。臨床病理学的因子との検討では病理学的リンパ節転移、病理学的進行度、リンパ管侵襲と正の相関を認めた。分化度、壁深達度、脈管侵襲とは相関を認めなかった。また、KiLabeling Indexと正の相関を認めた。術後生存率の検討ではCD24(+)の症例ではCD24(-)の症例と比較して優位に予後不良であった。【結語】CD24発現は腫瘍の増殖・浸潤能を反映し、予後因子マーカーとなる可能性も示唆された。今後、症例数を増やし、in vivoの実験も加えて検討を行いたい。
すべて 2009
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Ann Surg Oncol. 16
ページ: 506-514