研究概要 |
【目的】CD24はglycosylphosphatidylinositol結合型シアロ糖蛋白である。正常ではBリンパ球前駆細胞,好中球,神経細胞や一部の上皮細胞の細胞膜に存在し、B細胞リンパ腫,グリオーマ,肺癌,肝細胞癌,子宮癌,卵巣癌,乳癌,前立腺癌,膵癌,大腸癌など種々の悪性腫瘍で発現している。CD24はp-selectinのligandでもあり,血管内皮細胞や血小板にp-selectinを介して結合し,腫瘍細胞の増殖,転移に関与する可能性が報告されているが、いまだ不明な点が多い。消化器癌におけるCD24の発現を調べ、その意義について検討する。 【方法】2001年から2004年までの手術症例82例の摘出標本から得たホルマリン固定切片を用いてCD24の発現を免疫組織学的に検討し、臨床病理学的因子(年齢、性別、腫瘍最大径、分化度、壁深達度、リンパ節転移、進行度、リンパ管侵襲、静脈侵襲)および予後との関係を解析した。また連続切片においてKi67 Labeling Indexの検討も行い、これらの相関を調べた。 【結果】正常の胃粘膜ではCD24は細胞膜に弱く染色された。腫瘍組織においては高分化な部位では分化型胃癌ではCD24の細胞質発現率が有意に高く、進行度が高くなると有意に発現率が増加した。またリンパ節転移陽性例において、CD24の発現が高い傾向があった。またcD24の発現陽性例ではKi-67 Labeling Indexが高い傾向が見られた。その他の因子と有意な相関関係は認められなかった。CD24発現陽性例は有意差を認めなかったものの、陰性例と比較して予後不良な傾向であった。 【結語】CD24の発現は腫瘍の浸潤・増殖能を反映することが示唆された。現在cell lineを用いてWestern blot法での検討も行っており、今後これらの検討も加えて報告を行う予定である。
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