研究概要 |
(1) 新しい合成蛍光化分子のスクリーニング 新規蛍光化分子として,インドシアニングリーンの二つの親水基のうち,一方を長鎖アルキル鎖に置換した誘導体を7種(それぞれ鎖長が異なる),また,親水基の一つにリン脂質分子を直接結合させた誘導体1種を試作合成し,蛍光化リポソームを作成,スペクトロメータを用いた蛍光励起特性,蛍光強度を計測した.その結果,これら誘導体の蛍光励起特性はほぼ同様であるが,概ね鎖長の長いものほど高い蛍光強度が得られることが明らかとなった.このうちもっとも高い蛍光強度の得られた分子(ICG-8)を用い,粒径約200nmのリポソームを作成,8週齢のマウスの足底に局注することにより所属リンパ節への繋留性を検討したところ,インドシアニングリーン水溶液と比較し,投与1時間後において統計学的有意に1次リンパ節特異的な繋留性を確認できた.また蛍光顕微鏡を用いた組織の検討により,トレーサーのリンパ節辺縁洞への集積を認めた. (2) 造影剤内包化蛍光リポソームの作成 X線造影剤内包化の第一段階として,まず,インドシアニングリーン分子を含む径約数百nmの脂質二重膜(ベシクル)への内包化を試みた.作成した蛍光化ベシクルをゼラチンを用い凝集し,ブタの胃壁に局注したところ,蛍光腹腔鏡により近赤外蛍光を確認するとともに,X線CT撮影装置により,同部に造影剤の陰影を確認することができた. (3) 臨床試験へ向けた準備 (1)のマウスにおける動態解析に用いたものと同じ性状の蛍光化トレーサーの生体毒性の解析を外部機関に依頼したところ,ヒトに投与する予定量の約100倍量の経口投与,経静脈投与において,一切毒性を認めなかった.
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