研究概要 |
当科で開発された、ラットの胃全摘後十二指腸液食道逆流再建手術モデルを用いて、farnesoid X receptor (FXR)のアンタゴニストであるガグルステロン(GS)による食道発癌への影響を検討するため、ラットを用いて十二指腸食道逆流モデルを作成した。すなわち、7週齢のWistar雄性ラットを用いて、エーテル麻酔下に胃を全摘後、空腸を起始部から約4cmの部位で食道の断端に端側吻合した。これらの動物を次の3群に分けて検討した。(1)GS高用量投与群60頭(2)GS低用量投与群(1mg/kg/day)60頭、(3)コントロール群(非投与群)60頭となった。 ラットを50週目に屠殺して、各群における食道の炎症の有無を判定し、腫瘍が発生している場合は腫瘍の個数、大きさを測定した。病理組織学的な過形成の発生頻度はコントロール群、GS低用量投与群、GS高用量投与群ともに100%で差は認められなかった。円柱上皮化生はコントロール群75%に対して、GS低用量投与群80%、GS高用量投与群83%と差がなかった。また異形成、癌の頻度もコントロール群がそれぞれ50%,38%に対して、GS低用量投与群は40%,50%、GS高用量投与群は40%,33%といずれも差が認められなかった。癌の種類は、扁平上皮癌、腺癌、腺扁平上皮癌、粘液癌がほぼ同じ頻度で見られたが、各群で発生率に差は認められなかった。免疫組織学的検討ではFXR, cyclooxygenase-2, PPARαの発現に3群間で差はみられなかった。 以上の結果から、ガグルステロンはラット胃全摘後十二指腸液食道逆流モデルにおいて、腺癌の発生を抑制することはできないことが判明した。
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