研究概要 |
触覚を使用できない腹腔鏡下手術では、さまざまな画像技術を用いた手術支援:術前シミュレーションや術中ナビゲーションが行われているが、消化管内の病変の位置をナビゲーションしたり、術前シミュレーションと位置合わせするには、術中の画像支援が必要である。従来,位置センサーやMRIが用いられていたが、簡便な超音波走査で可能となるかの基礎的な研究を行った。最大の問題は、気腹ガスや消化管内ガスのような気体層が介在する状況での超音波走査が可能かどうかで,この目的のために,通常の接触式超音波診断装置に比べて高い増幅が可能で、しかも人体組織内での減衰状況に応じて最適送信周波数を設定できる計測装置を計画した。 昨年度までの実験で,最初に製作した600kHz10mm径アレイセンサを用い,空気層を介して金属クリップの画像化は可能とわかった。また,消化管壁と気体層の両方を介しての超音波走査のためより増幅可能な測定システムとして,400kHz空気超音波探触子を用いたピッチ・キャッチ法で腸管壁にみたてたエラストマー(軟性樹脂)と空気層を介してエラストマー下の金属の描出も実験上可能であった。しかし、まだ分解能が低く、臨床的に有用な精度ではなかった。 そこで、本年度は、昨年度までの実験成果をふまえて、分解能の向上をはかるためにこれまでの送受信同周波数を変更し、送信0.8MHz,、受信1.6MHzの組み合わせで2次高調波測定システムでの基礎実験の後、新たな受信センサを作成し分解能の向上をはかった。疑似foldおよびIIc様病変部を有する疑似胃壁で走査したが、十分な画像分解能が得られないので、1-3Mhz程度に送受信周波数を上げて実験を行った。当初のシステムでは、送信、受信探触子のビーム径中心が離れているため、分解能が低下、送信、受信機のインピーダンス不整合のため受信ピーク周波数が低下するという問題があった。送信2MHz、受信3Mhzでの走査実験では、最終的に、ファントムの漿膜面からすこし離したセンサ配置(気体層介在)の走査で、金属クリップ、および疑似病変の画像化が可能であった。
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