研究概要 |
われわれはin vivoにおける潜在型TGF-β1活性化の機序を解析するために潜在型TGF-β1を変異させLTBPと結合を不可能にしたマウス(変異型TGF-b1ノックインマウス)において、生後4週から肺炎、心筋炎、大腸炎を発症し、生後8-12週で炎症が慢性化することがわかった。また、炎症が慢性化した後から胃癌、直腸癌、肛門癌を自然発症することを見出した。さらに大腸炎の腸管の遺伝子発現解析で、IL-1β,TNF-α,IL-6,IFN-γの発現上昇を認め、IL-7の発現低下を認めた。また、免疫染色による解析でも腸管粘膜上皮のIL-6の発現亢進、リン酸化STAT3の核発現の亢進を認め、Ki67の発現も亢進し、粘膜上皮の過形成も認めたことから、IL-6などのサイトカイン発現亢進が腸管上皮で生じ、STAT3の活性化を介して、腸管上皮の増殖が亢進することが示唆される結果となった。 また、腸管粘膜リンパ球の解析ではFoxp3発現Tリンパ球とIL-17発現Tリンパ球の低下とIFN-γ発現Tリンパ球の増加を認めたことから、腸管上皮ではTh1が有意で、TregやTh17が低下していることが示唆された。 また、インテグリンβ8ノックアウト,変異TGF-β1ノックインマウスの解析では、胃癌の発症が66.7%,大腸癌が16.7%,直腸癌が60.0%に発症することがわかった(論文作成中)。 さらに、細胞性免疫のないRag2ノックアウトマウスと変異TGF-β1ノックインマウスとの交配で、プレリミナリーではあるが、マウスの発癌が減少することがわかった。これらのことから、TGF-β1の活性化が低下した環境下でのDCを介した特異的細胞性免疫の欠如は発癌に寄与するが、細胞性免疫自体が無い状況では、逆に発癌が生じにくくなることが示唆された。
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