研究課題
本年度は食道扁平上皮癌におけるDNAメチル化異常の解析と食道癌・胃癌におけるmicroRNA(miR)の機能解析に関して研究を行った。まずDNAメチル化異常の網羅的解析として新たにpyrosequencing technologyを用いたLINE-1のメチル化レベルの解析を行った。この結果、食道扁平上皮癌においては非癌部正常粘膜に比較して有意にLINE-1の低メチル化が認められること、LINE-1メチル化レベルの低下例は有意に予後不良であることを明らかにし報告した。このことは食道扁平上皮癌の発生および進展にDNAメチル化異常が重要な意味を持っていることを示唆する。一方、miRの発現異常に関して、食道癌におけるmiR-29cの高発現が食道癌の予後因子となることを明らかにした。また、血清中のmiR-21の発現を食道癌症例で検討し、食道癌患者では健常者に比較して血清中のmiR-21が有意に高値であること、化学療法の奏効例においては治療後のmiR-21が有意に低下し、治療効果のマーカーとなりうることを明らかにした。さらに食道癌患者と健常者の血清からexosomeを抽出し、その中に含まれるmiR-21の発現レベルが食道癌患者において有意に高いことを明らかにした。miRの発現異常の意義に関しては、食道扁平上皮癌におけるmiR-223の高発現がubiquitin ligaseであるFBXW7の発現を制御することを明らかにした。FBXW7は近年注目されている癌抑制遺伝子の一つであり、食道癌の発生および進展を解明する上で重要な知見と考えられる。胃癌においてはmiR-200bがZEB-2の発現を制御し、上皮間葉形質転換にかかわることを明らかにした。以上、食道癌においてDNAメチル化異常が高頻度に認められ、またglobal hypomethylationが食道癌の予後不良因子となることを示すことができた。また、食道癌・胃癌における様々なmiR発現の意義について、その機能的意義も含めて明らかにすることができたと考えている。
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